-黒田福美エッセイ- 美食浪漫

第17回 連載 【美食浪漫】 黒豚 済州島の黒豚は最高です!

風光明媚な済州島で出合った美味なる黒豚

済州島は、韓国を代表するリゾート地です。離島であることから、本土とは異なる独特の言語や生活文化が育まれてきました。そんなエキゾチシズムが人々をひきつけるのでしょう。済州島は昔から新婚旅行のメッカでもあります。
たくさんの新婚カップルが楽しそうに過ごす様子は、噂に聞いてはいても、実際に行ってみると驚かされます。たとえば、ホテルの朝のレストラン。男女ともに色鮮やかな韓服をまとったカップルが、あちらこちらでテーブルを占拠しています。なぜ朝から韓服を着ているのかというと、食事を済ませると同行のカメラマンを伴って済州島の名所を巡り、新婚旅行の記念アルバム撮影に出て行くからなのです。
観光地の至るところで、まるで花が咲いたように色とりどりのチマチョゴリをひるがえし、ポーズをとるカップルたち。美しく、微笑ましい光景です。

済州島は、日本ではゴルフを楽しむ場所としても人気です。また、韓流ドラマのロケ地としても知られるようになってからは、日本人の女性観光客も多く訪れるようになりました。最近では、民間団体が提案している「済州オルレ」という済州島の美しい自然が体感できるハイキングコースが話題です。済州島の新しい魅力を発掘し、ウェブサイトなどを通して発信していこうというもので、以下のサイトでは日本語でも紹介されています。
http://www.jejuolle.org/main/main.jsp

このサイトは韓国でもたいへん注目されています。これを見ると、都会の喧噪を離れて自然のなかを歩きながら癒されたいと願う韓国人の自然回帰の気持ちが伝わってくるようです。また私たちもそんな自然に誘われてみたいと思うような魅力的なページでもあります。ぜひ、アクセスしてみてください。

ところで、済州島は海や山の幸に恵まれたグルメの島としても注目のスポットです。離島ですから、海の幸が豊富なのはだれでも想像に難くないでしょう。ですが、私にとって済州島といえば、絶対にはずせないと思うのが「黒豚」なのです。

上質の塩だけで黒豚本来の味を堪能する

黒豚の塩焼きはまさに絶品。これを味わわずして、済州島へ行った意味がないと思うほどです。名のある店では使用する肉が黒豚であることを証明するため、表皮に黒い毛がひげそり跡のようにポツポツと残った肉が使われます。
うっすらと黒い毛の残った表皮の部分から、その下の甘いゼラチン質、赤身肉をしっとりと覆う脂肪、ジューシーで味わい深い赤身肉まで、各層を貫いて切り身にした厚切りの肉片。この厚切りの黒豚の前では、今、ソウルで流行っている小洒落た「サムギョプサル(豚バラ肉)」もすごすごと引き下がるしかないしょう。

美食浪漫 写真 初めて黒豚の切り身を見たとき、表皮にひげそり跡のようにのこった黒い毛に驚きました。ところが、炭火で焼くうちに黒い毛は跡形もなくなります。そして、その味ときたら……。
豚肉には特有の臭みがあるといわれますが、それは微塵もありません。芳ばしい香りと肉汁、噛みごたえのある甘いゼラチン質の食感と赤身肉の味わい。味付けには上質の塩以外、必要ありません。むしろ黒豚本来の味わいを堪能するには、他の調味料は不要と思うほどです。こんなに美味しい豚肉が世の中にあるのかと思いました。

強いて言うなら、ときどき口の中をさっぱりと流す、韓国焼酎がほしいことぐらいでしょう。一度食べたら忘れられない味とはこのことです。
済州島に行く機会がありましたら、ぜひ、黒豚を味わっていただきたいと思います。

次回更新は6月1日を予定しております。

筆者プロフィール

黒田 福美 (くろだ ふくみ) 女優・エッセイスト
 東京都出身。 映画・テレビドラマなどで俳優として活躍する一方、芸能界きっての韓国通として知られる。テレビコメンテーターや日韓関連のイベントにも数多く出演、講演活動なども活発におこなっている。韓国観光名誉広報大使、日韓交流おまつり2009InTokyo実行委員も務め、著書に『ソウルマイハート』『ソウルの達人 最新版』(講談社)などがある。韓国地方の魅力を紹介したDVD『Ryu・黒田福美が行く韓国四季の旅』も好評発売中。09年は『ビバリーヒルズチワワ(吹き替え)』(Disney)、『ゼロの焦点』(東宝)に出演。
黒田福美ブログ http://ameblo.jp/kuroda-fukumi/
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