-黒田福美エッセイ- 美食浪漫

第4回連載 【美食浪漫】 キムチ第三話 キムチの食べ頃、お好みはそれぞれ

キムチは生きている!たっぷりの乳酸菌で日々熟成されています。

キムチは皆さんもご存じのように、乳酸によって発酵した「発酵食品」です。その乳酸菌の量たるや、「乳酸飲料」など足下にも及ばないと聞きました。
キムチは作られてから保存されている間にも少しずつ発酵が進み、熟成されています。まさにキムチは生きていて、時々刻々とその味わいが変化しているのです。

唐辛子には、キムチに雑菌が繁殖することを防ぐ効果があります。それは容易に理解できるのですが、なんと乳酸菌の発酵も唐辛子によって促進されるというのです。唐辛子を入れたキムチと入れないキムチ(白キムチ)とを比較すると、なんと乳酸菌の量は10倍も違うのだそうです。
唐辛子は乳酸発酵を助け、キムチの味に深みを増すために貢献しているということですね。

余談ですが、スーパーマーケットなどで売っているキムチなどにはよく「賞味期限」が表示されています。本来キムチは発酵しているので腐ることはないのですから、私はいつもこの表示を不思議に思っていました。韓国では気温の変化に左右されぬよう、瓶ごと土中に埋めて何年も保存したキムチもあります。
「賞味期限」とは一体なにを基準にしているのか、伺ってみたいと思っているくらいです。

時間がたって透明感のある飴色になると、まろやかでより深い味わいになります。

人によって「キムチの食べ頃」の好みはいろいろです。漬けたてのまだ白菜の生っぽい味わいが好きだという人もあれば、私のようによく熟してからが好きという人もいます。
乳酸発酵が進まないようにするには保存の温度を0度に維持するのが良いようで、韓国では一家に一台といってもオーバーではないくらい「キムチ冷蔵庫」が普及しています。

確かに発酵が進むと酸味は増しますが、それは乳酸発酵が充分に進んだということなのです。私はここからがキムチの醍醐味だと思っているので、買ってきたばかりのキムチなどには目もくれません。新しいキムチはとりあえず冷蔵庫に入れて最低1カ月はそのまま放っておきます。「賞味期限」がいつであろうが、気にも留めません。

美食浪漫 写真 時間がたってよく熟れ(キムチには「熟れる」という言葉をよく使います)、白菜の根本などいかにも固そうな白色から透明感のある飴色になったところでおもむろに手をつけ始めるのです。発酵が進んだキムチは実に味がまろやか、味に深みが出るのです。

韓国でも料理屋さんでわざわざ古漬けキムチを頼むことがありますが、そうするとその店の主人も「あなた、日本人のくせにわかってるね」と言わんばかりに、相好を崩して自慢の古漬けキムチを出してくれたりするのです。

キムチはやっぱり白いご飯の上に広げ、お箸で熱々のご飯をクルっとくるんで食べるのが最高です!
よく熟れた瑞々しいキムチのシャキッ!とした歯ごたえと、あたたかいご飯が醸し出すハーモニー、これに勝るものはないでしょう!
美味しいキムチがあれば、おかずいらずです。

不思議なことにこういう食べ方をするとどんなに沢山ご飯をたべても、私は「胸焼け」をすることがありません。これも乳酸菌が消化を助けるためなのかなぁ、と勝手に思っているんですけれどね。

次回更新は11月1日を予定しております。

筆者プロフィール

黒田 福美 (くろだ ふくみ) 女優・エッセイスト
 東京都出身。 映画・テレビドラマなどで俳優として活躍する一方、芸能界きっての韓国通として知られる。テレビコメンテーターや日韓関連のイベントにも数多く出演、講演活動なども活発におこなっている。韓国観光名誉広報大使、日韓交流おまつり2009InTokyo実行委員も務め、著書に『ソウルマイハート』『ソウルの達人 最新版』(講談社)などがある。韓国地方の魅力を紹介したDVD『Ryu・黒田福美が行く韓国四季の旅』も好評発売中。09年は『ビバリーヒルズチワワ(吹き替え)』(Disney)、『ゼロの焦点』(東宝)に出演。
黒田福美ブログ http://ameblo.jp/kuroda-fukumi/
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