2015年度の助成対象

Grant for 2015

2016年3月14日(月)、2015年度助成証書授与式を駐日韓国大使館・韓国文化院にて執り行いました。式典には、元衆議院議長の伊吹文明衆議院議員、日韓親善協会中央会会長で元内閣官房長官の河村建夫衆議院議員、在日本大韓民国民団中央本部から呉公太団長をはじめ各界のお歴々の御列席を賜りました。 授与式では韓昌祐理事長から3団体、5個人の助成受贈者へ助成証書が手渡されました。続いて祝賀コンサート、記念レセプションが催され、終始和やかな雰囲気のもとに閉幕しました。

助成受贈者(※敬称略)

  • 金 貴 粉(キン キブン) 国立ハンセン病資料館学芸員

    在日朝鮮人ハンセン病患者・回復者の歴史とその実像 かつて日本のハンセン病療養所には、多いときで700人以上の在日コリアンが入所していました。在日コリアンのハンセン病発病率が高いのは、この病気が栄養や衛生状態の悪い場所で発病する可能性が高く、植民地支配下において生活水準を低く押し下げられていたことによるもの。これまで聞き取り調査を行い、ライフヒストリーを構築する作業を進めてきましたが、さらなる関連資料調査を進め、オーラルヒストリーを援用し、複合的な視点からその実像を明らかにすることをめざします。
  • 鈴木 久美(スズキ クミ) 駒澤大学総合教育研究部非常勤講師

    敗戦直後の在日朝鮮人の「帰国」に関する研究 敗戦後の日本政府とGHQ/SCAP(連合国最高司令官総司令部)による在日コリアンの「帰国」政策について、修士論文ではその決定過程や帰国を実施した送出港の状況などを明らかにしました。その後、日本と韓国での現地資料調査や聞き取り調査を行い、その成果を博士論文として発表。今回、博士論文を単著として刊行することで、在日コリアンの「帰国」の研究を促すとともに、新たな知見を示し、朝鮮史や日本史の枠組みを超えた世界史に連なるものとして提示することを考えています。
  • 熊谷 聡(クマガイ サトシ) 文筆業/元桜美林大学非常勤講師

    韓国カワウソ研究センター及びソウル大学とのカワウソ合同研究 日本で絶滅したカワウソは、韓国では保護や保全によって数が増えています。今、韓国のカワウソ研究者は、伝染病予防を目的に日本への分散飼育を求めていることから、「日韓カワウソ合同研究会」を設立。研究者や飼育関係者、学生の交流を促すことで飼育・繁殖・医療技術の向上を図っていきます。また、野生カワウソのエクスカーションを企画。30年に及ぶ韓国でのフィールドワークを生かし、日韓の動物園・水族館という現場と研究機関の懸け橋となる活動を実施します。
  • 尾崎 孝宏(オザキ タカヒロ) 鹿児島大学法文部比較地域環境コース 代表/鹿児島大学法文部教育学域法文学系教授

    日韓の大学生による国際交流モデルの構築 本コースでは、文化人類学の現地調査手法と異文化理解の方法により、学生の感性・創造性と行動力を生かしながら、日韓の市民交流に役立つモデルの提示をめざしています。すでに10年にわたって、パートナーである全北大学の学生とは共同調査を通して、経験と実績を積み重ねてきました。日韓の学生が社会問題の解決に向けて情報発信し、日韓の教員側は学生がより効率的に高度な交流活動に参加できるようにし、シンポジウムで市民レベルの交流も試みます。
  • 池内 敏(イケウチ サトシ) 名古屋大学大学院文学研究科教授

    江戸時代の朝鮮使節・異聞 ある高名な東洋史研究者が、朝鮮王朝から中国に派遣された朝鮮燕行使と日本への朝鮮通信使の往来について、前者を「幹線」、後者を「ローカル線」と表現。しかし、朝鮮王朝による日本への外交使節=訳官使の派遣は50回以上を数え、1630年代から1860年代まで継続されていました。訳官使は、対馬藩との「私的交流」と見なされてきましたが、実は江戸幕府の対朝鮮外交の一環をなしていました。訳官使と朝鮮通信使の連続性や相互補完性を意識し、これまでにない朝鮮通信使研究の再構成を進めていきます。
  • 朴 美 貞(パク ミジョン) 国際日本文化研究センター研究員/京都大学国際高等教育院講師

    写真の発見と朝鮮表象-「肖像」から「ポートレート(写真)」へ 朝鮮時代、権力層を中心に「肉理紋」という特別な表現方法による肖像画が多数制作されていました。その後、日本人により写真技術が伝えられると、朝鮮古来の肖像画は「写真」へ移行していきます。朝鮮の伝統肖像技法がどのように写真技術と接合し、それが人々の意識をどう変えたのか。写真は誰が制作し、どのように流通し、人々に受容されていったのか。写真という媒体を通して、朝鮮の近代化の過程で埋もれた断面に光を当て、植民地イメージを生み出す支配構造を明らかにしていきます。
  • 吉川 成美(ヨシカワ ナルミ) たかはた共生プロジェクト 代表/早稲田大学早稲田環境学研究所研究員・講師

    「プマシ(相互扶助)」の思想を発信し、日韓の有機農業ネットワークを構築する 山形県高畠町で始まった「相互扶助」を基盤にした有機農業が、EU諸国、カナダ、アメリカの若手農家・消費者の間で急速に拡大しています。一方、韓国では2011年の第17回国際有機農業連盟国際大会以降、農村共同体に伝わる人と人との繋がりと支え合いを意味する「プマシ」が注目されています。そこで、信頼関係を基盤にした韓国の「プマシ」や日本の結(ゆい)を共通する農の思想として広く発信し、農の文化を守り、有機農業のネットワークを構築していきます。
  • 米田 利己(ヨネダ トシミ) 対馬アートファンタジア実行委員会 代表/対馬アートファンタジア実行委員会実行委員長

    国境の島対馬で開催する、日韓芸術家の国際交流事業 日本と韓国を結ぶ島として古来より発展してきた「対馬」。ここを日韓の友好の地、人と人との心の中継地として捉え、国家や民族を超えたコミュニケーションを可能とする「現代アート」を媒介に、活発な交流を図っていきます。日韓の芸術家が対馬で作品を制作し、芸術祭「対馬アートファンタジア2016」で展示。また子どもを対象に芸術に関するワークショップを開催するほか、日韓の芸術家がお互いの文化や自身の芸術作品を紹介するなど、より理解を深める活動を行います。